注:今回の記事については、保育園によって対応が様々なので「一般論」での解説になります。また最後に東京23区内における保育園の状況についてまとめてありますので、そちらまでしっかりご覧ください。
◆ 保育士が小学校等休業助成金を受けられない?
前回のアップルジンジャー保育解説で「小学校等休業助成金(以後:休園補償)」について簡単に説明をしましたが、その後、保育園によって「私、子どもが小学生なのに休園補償を受けられません」という質問がありました。まずはこれについて解説していきます。
まずこの休園補償について申請するのは「保育園側」です。その為、保育園側が厚生労働省に申請をすることが休園補償を受け取る流れになります。ということはその判断をするのは保育士ではなく保育園側となります。
また残念ながら保育士本人が休園補償を申請したいと言っても保育園側が申請してくれないからといってもそれは違法ではありません。
◆ サイゼリヤとは異なる保育園の理由とは
先日大手ファミリーレストランの”サイゼリヤ”がこの休業補償を使用しないことで従業員が不満を募らせ、団体交渉に動いたというNEWSが話題になりました。実はサイゼリヤと保育園では申請しない理由が全く異なります。
実はこの休業補償についてはポイントになるキーワードがあります。それは1日8,330円を超える金額については事業者側が全て負担すること。ただファミレス業界の時給はそれほど高くなく、8時間以上働く職員も割合的に多くないのでメインの理由は別にあると考えられます。
だいすけは学生時代にファミレスでバイトをしていたことがあるのですが、大体、小中規模の店舗では社員は2~3人。後は基本的にパート・アルバイトで構成されています。更にこの構成を考えると、アルバイト学生は平日学校です。となると、平日の昼間は「パート従業員」によって運営が支えられているのです。
サイゼリヤって多分、保育士にはかなり馴染み深く親近感もあると思うのですが、コロナの影響で中国店舗が大打撃。元々低価格路線で頑張っているので、それだけ被害は大きいので、総合的に見てこのような判断を取ったのではないかと思います。
(知ってます?サイゼリヤって手数料が発生するクレジットカード支払いをあえて導入しないことで低価格を実践しているんですよ。)
◆ 主に休園手当をもらえていないのはパート保育士
主題を保育園に戻します。では保育園が休園補償を申請しないのはどうしてか。だって前回話したように【認可保育園】の運営費は変わらないのでしょう??
そこです。多くの保育園では保育料が変わらないので、社員については少数の保育士をローテーションして在宅ワーク扱いで通常通りの給料を支給している所が多いです。また休校の子どもがいる社員の保育士にも在宅ワークの名目で優先的に休ませて、給料もそのままにする保育園も多いです。
しかし子どもが少ないことで保育士の人数は足りている。となるとパート保育士も仕事がありませんので休ませる。パート契約の場合は時間に応じて支給なので勤務がなければ無給になります。
上述の青字で社員も1日8,330円を上限とする休園補償を出すことで保育園的には経営上、人件費が浮くことになりますが、実際は休園補償ではなく在宅勤務対応にしている保育園が多い。また保育士というのは保育園・小学校の子どもがいる時にはパートに切り替えて働いていることが多く、申請対象者もそれほど多くないのも青字の理由です。となると・・・パート保育士の為に申請をするという手間が発生してしまうという少数の意見がありました。でも一番の理由は以下になります。
◆ 職員のバランスを考えての決断
パート職員、全員が休園補償をするのであれば、保育園側も休園補償に踏み切ると思いますが、既に子育てが落ち着いている保育士や子どもがいない保育士は休園補償の対象外になりますよね。そうなると「あの人はお給料がもらえて、私はもらえない」という不平等な問題が発生します。その為、経営陣は働く職員のバランスを考えた結果、休園補償を使わないという選択をした保育園もあるようなのです。またその他にも、休園補償対象外の長時間労働のパートさんは社会保険に加入していることもあり、働かないと無給ではなくマイナスになってしまうパターンもあったりで色々と経営者は考えることが多いのです。
◆ でも保育運営費はかわらないのでしょう??
「だったらパートも全員が出勤扱いで給料を支給すればいいじゃない!!」
そう思うでしょう??そうなると「週の契約時間によって不平等が生じる」のです。
ここからはまた表現が難しいですが、保育園において「職員の足並みを揃える」というのは重要なこと。しかし女性が多い職場だからこそ、男性の職場と比べると「この足並みを揃える」というのが非常に難しい。だからこそ経営側は出来るだけ足並みが崩れるような要因を作りたくないのです。
◆ 保育園によって対応は様々
上述のように今回は対応が本当に様々です。特に「認可園」と「それ以外の保育園・幼稚園」などでは運営費の変動が影響して全く異なる対応になっています。仮に該当する保育園が認可園であっても、同一法人で認証園などの地域認定保育園があったりするとそのバランスを取っている法人もあります。
また認可保育園であっても「パートを含む全職員に全額の休園補償」「いち早く子育て該当者には助成金の申請で家庭保育に専念」「出来るだけ有給休暇で対応」などなど。明確な一律の基準がないからこそ対応は本当に様々です。
ただ中には小学校等休業助成金は「パートも取れる」「旦那さんが家にいても取得できる」といったことを知らなかった事業者もあり、該当する方は直接聞いてみた方がよいと思います。また申請しないという判断をもらった場合にもその理由をちゃんと聞いた方がよいと思います。
◆ 運営側の大変さも理解していきましょう
今回の騒動で現場の保育士さんは色々と大変な想いがあったと思います。感染のリスク。おもちゃや保育室の消毒&清掃で手が荒れてしまったり。。。
経営側はそのリスクを承知の上でどのように保育士さんに働いてもらうかを考えており、実際に感染した場合にはどのように対応するかマニュアルを作っていたり、メンタルケアについても考えている保育園もあります。
他にも保育実習生の受け入れが決められない。4月の国家試験が中止等で次年度の採用計画についても見直し。
マスクや消毒液についての確保も大変で、優先的に確保する為に通常の金額よりも高額での購入も実際にしている保育園がほとんどです。
(マスクについては10倍~20倍の金額でなおかつ使用量も多いですしね。)